pH計算の基礎。雨のpHが5.6くらいになる理由:Excelでもできます。

LIFE STUDY

インターネットで雨のpHと調べると「pH 5.6くらいになる」と出てきます。

小学校の理科の授業で酸性雨の勉強をした後、雨のサンプルのpHを試験紙で測定して「うわー酸性だ」なんて言ってた記憶がありますが、実はもともと少し酸性なんですね。今思えば僕の住んでいた田舎で、酸性雨が降るはずがないと思います。

なぜpH 5.6になるのかを分かりやすく書いているサイトがなかったので、今回はこれを計算で求めてみようと思います。

大気中の二酸化炭素 (0.033 %) が溶け込んだ水の pH は 5.6 である。通常の雨水は二酸化炭素で飽和状態になってはいないため、大気汚染物質がなければその pH は 6 前後である。これは二酸化硫黄などの工業廃棄物によって雨水の pH が激しく低下する酸性雨現象とは異なる。

wikipediaより引用

Step1 大気と平衡状態にある水の二酸化炭素(CO2)濃度を求める

雨のpHが5.6になる理由は大気中の二酸化炭素が溶けているからです。

まずは大気と平衡になった時の雨水の二酸化炭素濃度を求めてみましょう。ヘンリーの法則から求められるはずです。

以下が計算です。大気中の二酸化炭素濃度を410 ppmとして、25℃、大気圧(0.1013 MPa)の条件で平衡状態にある水の二酸化炭素濃度は1.39×10E-5 [mol/l]となりました。

ヘンリー定数は25℃の時の値、Hco2 =165.8 MPaを使いました。後の説明になりますが、二酸化炭素は水中で二段階に解離して様々な形態をとります。したがって、二酸化炭素のヘンリー定数は様々な形態をひっくるめた見かけの値になっています。

xはモル分率です。水中に溶けている二酸化炭素は希薄なので水1 Lの物質量55.5 molをかけて二酸化炭素の濃度を求めました。

Step2 炭酸イオンの濃度を水素イオン濃度の式にする

Step1では、水に溶けている二酸化炭素濃度は1.39×10E-5 [mol/l]となりました。

この二酸化炭素は、水と反応して炭酸 H2CO3(CO2+H2O→H2CO3)となり、炭酸は解離して重炭酸イオンHCO3(-)、炭酸イオンCO3(2-)になります。

式で書いてみました。K1、K2は酸解離定数と呼ばれ、温度が同じならいつも一定の値になります。Wikipediaによると25℃の時のK1=4.45×10E-7、K2=4.7×10E-11だそうです。

また、[ ]は濃度を表します。ここでは、[mol/l]です。

さて、ここで[CO2(aq)]+[H2CO3]をまとめて[H2CO3*]とおきます。アスタリスクは、よく「スター」と読んで「見かけの」を表すのに使います。ただ、私はこの読み方が正しいのかどうか知りません。

次に、Step1で求めた二酸化炭素濃度(nco2)は、見かけのヘンリー定数を使って求めたので、[H2CO3*][HCO3(-)][CO3(2-)]の和になります。

これに、酸解離定数の式を連立させると、未知数3つ([H2CO3*][HCO3(-)][CO3(2-)])に式が3つなので解くことができます。水素イオン濃度[H+]もここでは未知数ですが、まだおいておきます。

[HCO3(-)] =、[CO3(2-)]=の形に変形して解いていきます。

以下が解です。

これで、[H+]を任意に決めると各濃度が決まるようになりました。

Step3 水素イオン濃度[H+]を求めpHを計算する。

ここから、水素イオン濃度[H+]を求めていきましょう。

[H+]を決めると、もう一つ決まるものがあります。

水酸化物イオン[OH-]ですね。水の中の[H+]と[OH-]の掛け算は、温度が同じなら常に一定の値になります。この値をKwと言って、水のイオン積と呼びましたね。

したがって、[OH-]を[H+]の式で書くと以下のようになります。

ここまでで、[H+]を任意に決めてあげると、[H2CO3*][HCO3(-)][CO3(2-)][OH-]が自動的に決まるようになりました。

そうしたら、ここで[H+]を適当に決めてあげようと言うことになりますが、[H+]を決めるにあたり満たさないといけない条件がもう一つあります。

それは、「電気的中性の原理」です。

これは、「水に溶けるイオンの電荷を全て足し合わせると0になるよ」ということを言っています。

いま考えている条件だと以下のようになりますね。[CO3(2-)]が2倍されているのは、電荷が(2-)だからです。

電気的中性の原理を満たす[H+]を決めれば、pHが計算できます。pHの計算は、定義の通りです。

次の項では、実際に[H+]を計算させてみます。

これまでの計算をGoogleスプレッドシートでやってみる(Excelでもできます)

ここまで説明した計算をGoogleスプレッドシートでやってみます。

なぜExcelではないかというと、僕が持ってないだけです。。もちろんExcelでも同じことができますのでご安心を。

Googleでも、Excelでも同じなのですが、「ソルバー」という機能があります。ソルバーが何かというと、方程式を解くための機能です。

今回はこれを使って解いていきます。

ソルバーを使うために、Googleでは「Goal Seek」アドインを入れる必要があります。Excelの場合は、オプションからソルバーをONにする必要があります。この辺りの設定は、詳しく説明すると長くなりそうなので調べてみてください。

ソルバーに、満たすべき条件と操作変数を与えると、解を自動的に探索してくれます。

ここでは「電気的中性の式」を満たすべき条件に与えて、0になるようにpH(=水素イオン濃度[H+])を変化させていきます。

Googleスプレッドシートに入力してみる。

以下の図のように入力してみました。pHには適当な値を入れておきます。ここでは中性としてpH 7.0にしました(赤いセル)。

黄色いセルは、酸解離定数や大気圧、大気中のCO2濃度などの与条件です。

チェックのところは、水のイオン積を満たしているか、炭素収支を満たしているかを計算の確認をしています。

ただし、電気的中性の式(青いセル)には0以外の数字が入っています。これから、この式が0になるようにソルバーでpHを変化させていきます。

ソルバーで解いてみよう

図の右に出ているのがソルバーです。以下のように設定します。「電気的中性の式が0になるようにpHを変化させなさい」という意味です。

「Set」→青色セル(電気的中性の式の左辺)
「Equal to:」→0 (目標値)
「By changing cells:」→赤色セル(操作セル=pH)

これでRunしてみます。

値がどんどんと変化して、青色セルが0に近づいていき、最終的にpH 5.64に収束しました!

計算の様子を動画でも用意しました!

https://www.youtube.com/watch?v=9WNyjy4wwvQ

まとめ

雨のpHが5.6になる理由について計算してみました。

実際には、他のイオンも溶けていたり、大気と平衡になっていなかったりで、ズレはあると思いますが、理論的にはpH 5.6を導出できましたね。

機会があれば、NOxやSOxも入れて酸性雨の計算もしてみたいですね。

今回は、ここまで〜!